法律
裁判実務において、「裁判所が釈明する」という語法が慣用化した背景には、⑴明治民訴法の条文がミスリーディングであったこと、⑵「釈明」は「解明」の意味に理解し得たこと、⑶その後、「釈明権」という用語が定着したことという要素を想像することができる。
1949年から2015年まで,ドイツ連邦共和国基本法の60回の改正の概要を一覧表にしたものである。なお,参考までに,改正当時の政権与党の構成を色分けで図示している。
メルケル政権下の改正である。現職の政権であり,総括するには早いが,第52次改正(第1次連邦改革)及び第57次改正(第2次連邦改革)は,欧州統合を踏まえて,連邦と州との関係を整理するものであり,基本法施行以来の大改正といわれる。
長期のコール政権の後,左派の社会民主党が政権を取り戻す。しかし,基本法改正という面では,約7年の間に5回の小改正があったのみである。その中では,動物の保護義務を追加した第50次改正が,一見の印象以上に注目に値する改正である。
政権を取り戻した保守系のコール政権は,国鉄民営化,郵政民営化などのための憲法改正を行う。しかし,コール政権の下で最も重要なのは東西統一に伴う憲法改正であり,同改正を巡る議論を経て,基本法が統一ドイツの憲法として確立することになる。
大連立政権の経験を経て,始めて社会民主党主導の政権が成立する。対外的には「東方外交」が展開された時期であるが,基本法の改正については,従前の傾向が維持され,その頻度も低下する。基本法が,西独の憲法として安定をみるようになったといえる。
第7次改正の経験を踏まえ,左右の大連立政権が成立すると,その圧倒的な議席占有率を背景に,緊急事態条項を整備する第17次改正が成立する。同改正により,西独の対外的地位が安定し,その後の改正は,連邦と州との権限関係にかかわるものに向かう。
戦後,アデナウアーに始まる長期保守系政権が成立する。基本法には,急拵えの暫定憲法としての側面があったため,早い段階から改正を重ねることになる。しかし,当時の重要課題は主権回復であり,これに関して,第7次改正が重要なメルクマールとなる。
ドイツ基本法は,2014年12月23日まで合計60回の改正を重ねている。このような高頻度の憲法改正の要因はどこにあるのか。このことを論じるには,個々の改正の目的及び意義,必要性や重要性を把握する必要がある。そこで,これを整理する。
平成25年度の簡裁公判事件の無罪員数は434人に及ぶ。調べてみるに,その多くは,宇都宮東警察署が,レーダー式速度測定装置の使用方法を誤ったままスピード違反を摘発したことに伴う再審無罪の事案のようである。
法律用語「追行」の「追」という漢字は,いかなる意味を担っているのか。その由来を尋ねると,どうやら,明治立法期の訳語が,転用を経て定着したという複雑な経緯があるようである。少なくとも「遂行」の読み誤りであるという説は即断にすぎる。
絞首した死刑囚が蘇生した場合の処置について、明治5年の石鉄県の事件が、再絞首せず釈放した例として有名である。しかし、その後、現行の刑法が、このような場合であっても釈放せず再絞首すべきことを意図して制定されたことは、あまり知られていない。
最判昭和37年12月16日、原処分の取消しと裁決の取消しとが同時に求める訴えに対し、前者の請求を棄却しながら、後者を不適法却下ではなく棄却した原審の判断を是認したものであるが、これを誤って援用していると思われる文献が散見する。
少年犯罪の実名報道を禁じる少年法61条は,文言上,単に逮捕された段階には適用されないようにみえる。これを当然のように逮捕段階にも適用するのが法解釈というものであるが,そこに何の正当性があるのかという疑問は,忘れないでおきたいと思う。
法律上の夫婦間に強姦罪が成立するかという問題については,従前,婚姻関係の破綻の有無を問題とする裁判例が有名であったが,近時,破綻の有無にかかわらず,夫婦間でも強姦罪が成立することを正面から認めた東京高裁の裁判例が公刊された
現在のアメリカの法曹教育は,ラングデルが創始し,大学系ロースクールを基盤として確立した。この教育システムに対しては,古くからリアリズム法学などの立場から批判の声があり,他方,臨床実務教育や法曹倫理教育の不足を問う声もある。
日本の国籍法は,「元祖国民」を定義していなため,「血統主義」のみによって日本国籍を有することを証明することは難しい。私が,血統主義により日本国籍を有するかは,意外と曖昧である。
法令番号とは,法令の種類,制定者,暦年ごとに,法令に付される一連番号のことである。このナンバリングは,慣習に基づくものと位置付けられているが,そのような慣習が,どのようにして形成されたか,必ずしも定かでないため,その沿革を整理した。
検察官の独立性に関して,「検察官は独任制官庁である。」というキーフレーズが用いられる場合がある。しかし,「独任制官庁」というだけであれば,例えば,税務署長も「独任制官庁」なのであり,その点は正確に理解する必要がある。
日本法の場合、相手を騙してセックスに合意させた場合、準強姦罪が適用される余地がある。しかし、この点を説明するにあたり、「法益関係的錯誤」を援用するのは、準強姦罪の構成要件との関係でミスリーディングではなかろうか。
国籍法は,日本国籍を有する父が子の出生前に死亡した場合の定めを置くが,日本国籍を有する母が子の出生前に死亡した場合の定めを欠く。しかし,「子が生まれた以上,その母は出産時に生きていたものと解する」ということにされているようである。
東京地判平成18年5月11日に対する判例時報の解説コメントには,同判決に対するインターネット上の批判に反論する部分がある。掲示板やブログ上の批判が,判例時報上で弁解するに値すると見なされたのであれば,その権威もなかなかのものである。
刑法には「人を殺してはいけない」とは書かれていないという指摘がある。しかし、法解釈学の正統によれば,刑法には「人を殺してはいけない。」と書かれていることになっている。
サイトを閉鎖するにあたり,そのコンテンツを全削除することの是非に対する議論がある。しかし、これを削除しないまま放置すると、他人の名誉を毀損する記事があった場合,名誉毀損行為は継続しており,時効が成立しないとされる可能性がある。
最高裁判所昭和61年12月11日判決・判例時報1225号60頁に関する民訴法判例百選の解説には、判決の原典に当たらず孫引きしたことによるのではないかと疑われる誤りがある。
消費生活協同組合法の原附則には、「消費生活協同組合えの組織変更」、 「市街地信用組合えの転移」など、助詞の「へ」を「え」とする不思議な表記がある。
「西行き車線の幅員は4.0メートル,東行き車線は4.1メートルであり,その外側にはそれぞれ1.0メートルの路側帯があり,さらに,その両側に歩道がもうけられている。」として,車道と歩道の間の部分を「路側帯」と呼んでいる事例
東京高等裁判所昭和53年3月8日判決 (昭和53年(う)第456号業務上過失傷害被告事件,東高刑時報29巻8号149頁,第一審・武蔵野簡易裁判所) 車道外側線の外側部分を表す白線を,道路構造令2条11号の側帯を表す白線であるとした事例 車道外…
車道外側線の外側部分は「歩行してはならない車道」だとして,歩行者側に45%の過失相殺をした事例。 当事者の主張部分では,車道外側線を表す白線を「外側線」と呼び,裁判所の判断部分では,車道外側線の外側部分自体を「外側線」と呼ぶ事例
刑法は,平成16年12月8日法律第156号による改正によって,いわゆる厳罰化が行われ,有期懲役刑の上限の見直し,強姦,殺人,傷害等の各罪の法定刑の引き上げ,集団強姦罪等の新設がなされた。本資料は,その厳罰化前の条文である。