近ごろの若いもん・エジプト編⑴

「最近の若いやつは…」という老人の繰り言について、英語の引用句の中には、6000年のエジプトの墓碑に同旨の文句が記載されていたとするものがある。しかし、ヒエログリフの使用が始まった時期を考えれば、その信憑性は非常に低いというべきである。

血統主義と日本国籍

日本の国籍法は,「元祖国民」を定義していなため,「血統主義」のみによって日本国籍を有することを証明することは難しい。私が,血統主義により日本国籍を有するかは,意外と曖昧である。

絵画のタイトル

現在,絵画にタイトルがあるのは当たり前のように考えられているが,この慣行は,18世紀以降,絵画が美術館に飾られるようになり,作品にプレートが付けられるなどするようになってから,徐々に確立してきたものにすぎないようである。

法令番号の沿革

法令番号とは,法令の種類,制定者,暦年ごとに,法令に付される一連番号のことである。このナンバリングは,慣習に基づくものと位置付けられているが,そのような慣習が,どのようにして形成されたか,必ずしも定かでないため,その沿革を整理した。

冬紅葉

慣用的に「春の桜に秋の紅葉」という形で対比されるが,京都における紅葉の盛りは,新暦の11月中旬ころであるから,暦の上では「冬」である。実際,勅撰和歌集においても,紅葉の歌が,冬の部立に分類されていることは珍しくない。

検察官の独立性と独任制の行政庁であること

検察官の独立性に関して,「検察官は独任制官庁である。」というキーフレーズが用いられる場合がある。しかし,「独任制官庁」というだけであれば,例えば,税務署長も「独任制官庁」なのであり,その点は正確に理解する必要がある。

元号の変わり目(史料編)

天平宝字,元慶,永観,慶応,明治,大正,昭和の各改元の詔書類,日本後紀,台記,江家次第の跋文,明治以降の政府内部の照会回答文書,清水澄「國法学」,芝葛盛「皇室制度」,美濃部達吉「憲法撮要」の抜粋など。

元号の変わり目(6)

結局,平成改元を除き,元号の変わり目については,諸説紛々とし,確立した解釈はないといわざるを得ない。敢えていえば,慶応以前も含め,全て改元日の午前0時で統一するのが,便宜であり,一応の理論的根拠もあるということになろうか。

元号の変わり目(5)

平成改元も,一世一元の制を根拠とする新帝即位時説にとっては分が悪い。平成改元は,一世一元の制を定めるものとして制定された元号法に基づくものでありながら,天皇の在位期間と元号の適用期間が一致していないからである。

元号の変わり目(4)

新帝即位時説は,一世一元の制を根拠とするが,天皇即位後2年目に改元した明治改元の説明の仕方に工夫が必要である。この点,明治改元は,一世一元の制の例外とする見解,一世一元の制を適用しない見解,一世一元の制と無関係とする見解がある。

元号の変わり目(3)

大正,昭和改元では,改元日説が通説化した。その結果,改元当日が,新元号なのか,旧元号なのかという問題に焦点が移った。そのようななか,一世一元の制度の趣旨を強調し,新帝即位の瞬間が元号の変わり目であるとする見解が生じた(新帝即位時説)。

元号の変わり目(2)

慶應以前の改元の効果は,改元の年の年始に遡及するという見解がある(年始説)。他方,そのような遡及はしないという見解もある(改元日説)。両者いずれが正しいのか,平安時代から明治時代に至るまで,必ずしも明確でない。

元号の変わり目(1)

明治天皇が崩御した1912年7月30日は,明治なのか,大正なのか。諸説が紛糾しているが,この問題を理解するには,古代から問題とされていた改元の年始遡及効の問題,近代から採用された一世一元の制度の趣旨などに遡って検討する必要がある。

江戸時代の「北陣」について

下橋敬長『幕末の宮廷』(東洋文庫・62頁)には,江戸時代においても,朝廷において,平安時代に行われていた「着鈦政」を「北陣」と称し,斬首刑の真似事をするという年中行事があったことが説かれている。「コウベ」と呼ばれる罪人役を演じる百姓も定ま…

偽計による強姦

日本法の場合、相手を騙してセックスに合意させた場合、準強姦罪が適用される余地がある。しかし、この点を説明するにあたり、「法益関係的錯誤」を援用するのは、準強姦罪の構成要件との関係でミスリーディングではなかろうか。

悪魔の証明と消極的事実の証明

消極的事実の証明について,それは「悪魔の証明」といわれることがある。しかし,沿革的にみれば,両者は全く関係のない概念である。少なくとも消極的事実の証明であるからといって,必ずしも「悪魔の証明」になるわけではない。

有終の美

吉野作造「憲政の本義を説いて其有終の美を済すの途を論ず」に対する疑問は「憲政有終の美」を飾ってしまっては,憲政が終わってしまうのではないかということである。「憲政1.0」の時代が終わり,「憲政2.0」の時代が始まるということであろうか。

国籍法2条2号

国籍法は,日本国籍を有する父が子の出生前に死亡した場合の定めを置くが,日本国籍を有する母が子の出生前に死亡した場合の定めを欠く。しかし,「子が生まれた以上,その母は出産時に生きていたものと解する」ということにされているようである。

ミミズの俗信「歌女」

秋の季語に「蚯蚓鳴く」というものがあるが、現在では、これはケラの鳴き声を誤ったものであると理解するのが一般である。ただし、1940年代、ドイツの研究者が、ミミズは声を持っているとの研究結果を発表したことがあるとのことである。

インターネットの時代

東京地判平成18年5月11日に対する判例時報の解説コメントには,同判決に対するインターネット上の批判に反論する部分がある。掲示板やブログ上の批判が,判例時報上で弁解するに値すると見なされたのであれば,その権威もなかなかのものである。

重複表現に関する若干の考察

重複表現に関しては、「漢字の重複」という概念が必要ではないか。「漢字の重複」は、必ずしも「意味の重複」を意味しないが、「漢字の重複」によって、「意味の重複」による重複感が際立つ場合があるように思われる。

或書曰 - ジョルジュ・ミノワ『悪魔の文化史』

ジョルジュ・ミノワ『悪魔の文化史』によれば、フランスでは、1682年の王令により魔女罪が廃止され、教皇パウルス6世の教皇書簡で祓魔師という聖職位を廃したため,1972年8月15日には,祓魔師の職務が消滅したとのことである。

ミミズの俗信「小児陰腫」

日本の俗信に、「ミミズに小便をかけると陰茎が腫れる。」というものがあるが、中国の『本草綱目』にも、これを連想させる記載がある。しかし、両者の伝える内容には重要な相違もみられ、互いに独立した伝承である可能性も否定し得ない。

万世一系とダグラス=ヒューム首相

英国首相ダグラス=ヒュームは,野党のハロルド・ウィルソンに「第14代伯爵」である点を攻撃された際,同人も「第14代ウィルソン」であると反論した。万世一系も同様であるが、「血筋」を純粋に生物学的に捉えると訳が分からなくなってしまう。

水で薄めても「水色」にはならない。

「水色」とは,「水の色」のことではなく,「水で薄めた色」のことであるという記事があった。しかし,藍染の濃淡は,染め重ねる回数を調整することによって作り出す。薄い色を作るにあたり,水で薄めるという発想はないと考えてよさそうである。

刑法には「人を殺してはいけない。」と書かれている。

刑法には「人を殺してはいけない」とは書かれていないという指摘がある。しかし、法解釈学の正統によれば,刑法には「人を殺してはいけない。」と書かれていることになっている。

サイトを削除閉鎖しないリスク

サイトを閉鎖するにあたり,そのコンテンツを全削除することの是非に対する議論がある。しかし、これを削除しないまま放置すると、他人の名誉を毀損する記事があった場合,名誉毀損行為は継続しており,時効が成立しないとされる可能性がある。

国乱れて忠臣現る

「国乱れて忠臣現る」の典拠が、『老子』であるとは断じえない。また、『老子』が典拠の成句であるからといって、『老子』の当該箇所と同じコンテクストで用いなければならないわけではない。

「心の闇」について

坪内祐三氏のコラム「『心の闇』の本当の意味を教えてあげよう」は,尾崎紅葉の小説『心の闇』を挙げ,「『心の闇』とはこんなに深い言葉なのだ」と結ぶ。しかし、紅葉の用例は,平安時代に遡る歌語「心の闇」に連なるものにすぎない。

判例百選と判決原典

最高裁判所昭和61年12月11日判決・判例時報1225号60頁に関する民訴法判例百選の解説には、判決の原典に当たらず孫引きしたことによるのではないかと疑われる誤りがある。

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