路側帯のようなもの(3)

.道路構造令に言う「路肩」である。

以上で,「図のCD間を車両が通行して良いか。」という当初の問題の解決を見ることができた。

 
 ================== 白線(A)
   反対車線
 = = = = = = = = =  中央線(B)
   車線 🚴
 ================== 白線(C)
 ++++++++++++++++++ 段差(D)
   歩道 🚶

ところで,前掲東京高裁昭58・8・3判決は,図のCD間を車道であるとする理由付けの中で,図のCD間は「路肩または路側帯とみるべきではなく,車両の運転者の視線を誘導し,側方余裕を確保する機能を分担する道路構造令2条11号*1の側帯」であるとしている*2

しかし,「側帯」とは,高速自動車国道又は自動車専用道路に設けられるべきものであり,ここで問題となっている一般道に設けられるものではない(道路構造令8条8項*3

したがって,道路構造令上の名称としては,むしろ同令2条12号の「路肩*4」とするのが妥当であろう。国賠事件であるが,東京高判平成8・9・26*5がこの用語法を用いている。。

もっとも,道路構造令(道路法)上の名称がなんであれ,道路交通法上の交通規制には何ら影響がなく,「図のCD間を車両が通行して良いか。」という問題に影響はない。

なお,いわゆる「路肩通行の制限」とは,「歩道、自転車道又は自転車歩行者道のいずれをも有しない道路」に関する規制であり,ここでは問題とならない(車両制限令9条*6

.まとめ

  1. 図のCD間,すなわち「歩道のある1車線道路における車道外側線の外側」は,道路交通法上の車道であり,他の交通規制がない限り,車両で通行することができる(東京高裁昭58・8・3判決*7ほか,執務資料道路交通法解説(12訂版)157頁。)
  2. もっとも,民事の高裁判例に,反対の結論を取るかのようなものもあり大阪高裁平14・1・25判決*8,現実には,この部分を車両で走行するのは控えた方が良いかもしれない。
  3. これに対し,2車線以上の道路では,通行帯区分という「他の交通規制」があるので,この部分を車両で通行することは,原則として許されない(道路交通法20条1項)
  4. また,この部分を用いてバイクなどで追い越しをするのは,右側追い越しの原則という「他の交通規制」があるので,原則として許されない(道路交通法28条1項*9

(了)

*1:現在の道路構造令2条13号に相当する。道路構造令2条13号「側帯 車両の運転者の視線を誘導し、及び側方余裕を確保する機能を分担させるために、車道に接続して設けられる帯状の中央帯又は路肩の部分をいう。

*2:東高刑時報29・8・149。同旨,前掲大阪高裁平3・3・22判決(執務資料道路交通法解説〔12訂版〕157頁参照) 。

*3:道路構造令8条8項「第一種又は第二種の道路の車道に接続する路肩には、側帯を設けるものとする。」

*4:道路構造令2条12号「路肩 道路の主要構造部を保護し、又は車道の効用を保つために、車道、歩道、自転車道又は自転車歩行者道に接続して設けられる帯状の道路の部分をいう。

*5:判例タイムズ960巻112頁.

*6:車両制限令9条「歩道、自転車道又は自転車歩行者道のいずれをも有しない道路を通行する自動車は、その車輪が路肩(路肩が明らかでない道路のあつては、路端から車道寄りの〇・五メートル(トンネル、橋又は高架の道路にあつては、〇・二五メートル)の幅の道路の部分)にはみ出してはならない。 」

*7:東高刑時報29・8・149.同旨,大阪高裁平3・3・22判決(執務資料道路交通法解説〔12訂版〕157頁) ,横浜地裁平8・4・22判決(交通民集29・2・597).

*8:ただし,この判決の対象となった道路は,2車線以上の道路であり,1車線の道路については射程外と読むこともできなくはない。

*9:道路交通法28条1項「車両は、他の車両を追い越そうとするときは、その追い越されようとする車両(以下この節において「前車」という。)の右側を通行しなければならない。」

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