戦前の初婚年齢に関する注意事項
人口動態統計の初婚年齢は、戦前と戦後で統計の基準が異なるので、全般的な傾向はともかく、その点を割り引いてみる必要がある。すなわち、戦前の部分は、婚姻を届け出たときの年齢を基準とするのに対し、戦後の部分は、結婚式を挙げるなどしたときの年齢を基準とするのである。
リンク先のように、この統計を提示するのであれば、例えば、「1943年までは届け出た時の年齢、1947年~67年は結婚式をあげたとき(結婚式をあげないときは、結婚生活に入ったとき)の年齢、1968年以降は結婚式をあげたとき、または同居を始めたときのうち早いほうの年齢である。」(平均初婚年齢の推移:平成22年版 子ども・子育て白書 - 内閣府)などと注記することは必須であろう。
というのも、伝統的な「足入れ婚」などの風習もあり、法律上の婚姻の時期が、現実の結婚の開始から、年単位で遅れるこもは少なくないといわれるからである。例えば、山本文夫「日本の配偶関係別構造の変動」(1982年)は、この統計上の問題を補正するとして、1975年の統計値を基準にした以下のような推計をする*1。
年次 | 男 | 女 | ||
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統計値 | 推計値 | 統計値 | 推計値 | |
1920 | 27.4 | 24.4 | 23.2 | 20.9 |
1930 | 27.3 | 25.2 | 23.2 | 21.6 |
1940 | 29.0 | 26.6 | 24.6 | 23.2 |
1950 | 25.9 | 25.6 | 23.0 | 23.5 |
1955 | 26.6 | 26.5 | 23.8 | 24.4 |
1965 | 27.2 | 27.0 | 24.5 | 24.5 |
1975 | 27.0 | 27.0 | 24.7 | 24.7 |

専門外のところでもあり、同論文の推計方法*2の信頼性を評価する術を持たない。しかし、いずれにせよ、初婚年齢の推移に関しては、多数の定量的な研究があるから、パッと見の印象で語るのは慎重になるべきであろう。